万が一、薬の期限切れを飲んだ場合には、体内においてどのような現象が起こるのでしょうか。救急医療現場や日本中毒情報センターに寄せられる相談事例から、主な健康被害のメカニズムを整理します。
第一に発生するのが「薬効成分の化学的分解に伴う有効性の喪失」です。例えば、アスピリンなどの解熱鎮痛成分は湿気によって加水分解され、サリチル酸と酢酸に変化します。これにより本来の鎮痛・解熱作用が劇的に低下するだけでなく、胃粘膜を過剰に刺激し、激しい胃痛や胃潰瘍、消化管出血を誘発します。
第二に「変質した分解産物による肝・腎機能障害およびアレルギー反応」です。有効成分が酸化・分解されて生成された副生成物は、体にとって異物(毒素)となります。これを解毒・排泄しようとする肝臓や腎臓に過度な負担がかかり、肝機能数値の急上昇や急性腎不全を起こす危険性があります。また、劣化した添加物や不純物によって、重篤な薬疹やアナフィラキシー様症状が引き起こされた事例も報告されています。
もし誤って期限切れの医薬品を服用してしまった場合は、以下のプロトコルに沿って冷静に対処してください。
- ステップ1(現状確認):何を、いつ、どれだけの量飲んだのか、パッケージの期限とロット番号を手元に控える。
- ステップ2(無理な催吐の禁止):自己判断で無理に吐かせようとすると、胃酸や薬剤が気道に入り誤嚥性肺炎を起こす危険があるため絶対に行わない。
- ステップ3(医療機関・相談ダイヤルへの連絡):かかりつけ医、または「中毒110番(公益財団法人 日本中毒情報センター)」や「#7119(救急安心センター事業)」に電話し、専門家の指示を仰ぐ。
- ステップ4(経過観察と受診):吐き気、腹痛、下痢、発疹、息苦しさなどの異常が現れた場合は、飲んだ薬のパッケージを持参して直ちに救急外来を受診する。