吉原遊郭編で散った上弦の陸・堕姫と妓夫太郎の死後も、読者に強い余韻を残しました。生前、人間の少女「梅」として焼き殺された妹には天国へ進む道が開かれていました。妓夫太郎は妹だけでも光ある場所へ行かせようと突き放しますが、梅は兄の背中にしがみつき「ずっと一緒にいる」と号泣します。結局、二人はお互いを背負い合い、自らの意志で業火の中へと歩き出しました。地獄行きでありながら、血の絆だけは決して引き裂かれませんでした。
一方、上弦の壱・黒死牟の最期は徹底した「虚無」に彩られています。武の極みを追い求め、弟・継国縁壱を超えるために鬼となった彼でしたが、遺体は崩壊し、遺品として残ったのは幼き日に弟へ与えたボロボロの笛だけでした。死後の世界で縁壱と語り合う描写すら許されず、自らが何のために生き、何を求めていたのかも見失ったまま、暗黒の淵へと静かに消えていきました。