頑健な肉体と揺るぎない精神力を持つ男――それが世間一般に定着していた渡辺裕之さんのパブリックイメージだった。しかし、その強固な鎧の裏側で、心身のバランスは静かに、そして確実に崩れ去っていた。報道では伝えきれなかった実態を辿ると、彼を襲っていたのは決して一過性の衝動ではなく、長期間にわたって蓄積された深刻な不調だったことがわかる。
関係者の証言によれば、几帳面で何事にも妥協を許さない性格が、知らず知らずのうちに自身を追い詰めていたという。役作りのための過酷なトレーニング、年齢に伴う体力の変化への焦り、そしてコロナ禍以降に激変した制作現場の環境。常に「理想の渡辺裕之」であり続けようとするプロ意識が、皮肉にも逃げ場のないプレッシャーへと変貌していった。