バーサーカーとの決着に際し、士郎は移植されたアーチャーの左腕を覆っていた「聖骸布(せいがいふ)」を完全に解き放ちます。この瞬間に展開された詠唱および内面描写は、型月作品屈指の緊迫感を放つ名文句です。
ナインライブズブレイドワークスの詠唱は、通常のエミヤの呪文(I am the bone of my sword...)の単純な短縮版ではなく、暴走する英霊の魔術回路を無理やり掌握し、単一の武具行使に全エネルギーを注ぎ込むための「自己改造コマンド」としての性格を持っています。
劇中で紡がれるプロセスは以下の通りです。
――思考を止めろ。迷えば死ぬ。
『投影、開始(トレース・オン)』
『工程完了(セット)』――
『是・射殺す百頭(ナインライブズブレイドワークス)』――!
士郎はアーチャーの腕から流れ込む膨大な情報と激痛に耐え、脳内で「装弾(ローディング)」「照準(エイム)」「トリガー・オフ」という銃器の機構を模した自己暗示を高速処理します。聖骸布を解いた代償として、士郎の肉体は使用するたびに内側から無数の「剣」が生え出し、記憶や自我を破壊されるという破滅的なリスクを背負っていました。命を賭した刹那の集中が生んだ奇跡の結晶といえます。