これほどの知名度と話題性を誇ったプロダクトが、なぜ廃盤に至ったのでしょうか。取材班が当時の市場動向やユーザーの声を精査したところ、単なる売上の増減だけにとどまらない、球体リップクリーム特有の構造的課題と消費者心理のギャップが浮かび上がってきました。
第一の要因は、愛用者の間で常に指摘されていた「中身の使い切り難易度」です。Chu Lipは直径約3cmのドーム型形状を採用しており、新品のうちは唇全体を一気にカバーできる爽快感がありました。しかし、使い進めてドームの山が削れてくると、唇がプラスチック容器の縁に接触してしまい、容器の奥に残った約3〜4割のリップバームが直接塗れなくなってしまうのです。「最後は綿棒やスパチュラでほじくって塗っていた」という声が多数寄せられており、この構造的ジレンマがリピート購入を躊躇させる一因となりました。
第二に、ポーチ内での収納性と携帯性の問題です。一般的なスティック型リップクリームの直径が約1.5cm程度であるのに対し、球体容器は厚みがあり、ミニバッグやタイトな化粧ポーチの中で想像以上にかさばります。「机の上に置いておくには可愛いけれど、ポケットに入れて持ち歩けない」という実用面での制約が、日常使いの定番アイテムとしての定着を阻む要因となりました。
さらに、2010年代後半から加速したリップメイクの多様化と衛生意識の変化も見逃せません。ティントリップの台頭や、より高密着で高機能なセラミド配合バームへと消費者の関心がシフトした結果、ロート製薬自身も「メルティクリームリップ」などの高機能スティック型へと開発資源を集中させたと考えられます。