2010年代初頭、大手芸能事務所プラチナムプロダクションに所属し、グラビア界のトップタレントとして多忙を極めていた愛川ゆず季。彼女が女子プロレスという苛烈なカテゴリーへの挑戦を表明した際、メディアやファンは激震に見舞われた。華やかなバラエティ番組や雑誌の表紙を飾る存在が、なぜ全身に痣を作り、肉体を酷使する未知の領域へと踏み出すのか。そこには周囲の反対を押し切るほどの、並々ならぬ熱量と覚悟が存在していた。
プロレスは単なるショーではない。肉体と肉体が激しくぶつかり合う本格的なスポーツ・エンターテインメントだ。準備期間中、彼女は毎日のようにマットに沈み、首を鍛え、受身の訓練に耐え抜いた。グラビアアイドルとしての美しさを削ぎ落とすかのような猛特訓。その過酷な姿は、当初「タレントの客寄せパンダ」と冷ややかに見ていた業界関係者や古参ファンの態度を徐々に変えていった。