なぜ人々は、これほどまでに不気味で不条理なキャラクターたちに惹きつけられ続けるのでしょうか。2024年から2026年にかけて国内外の文芸コミュニティやファンイベントで実施された意識調査、ならびにSNSの定性データを分析すると、興味深い心理的メカニズムが浮かび上がってきます。
大手エンタメポータルやファンコミュニティによる人気キャラクター投票データを集約すると、常に上位を占めるのは主人公のアリス本人ではなく、チェシャ猫(得票率約34%)とマッドハッター(得票率約28%)です。アリスは白うさぎ(約15%)に続く第4位前後に甘んじることが少なくありません。
SNSやフォーラムに寄せられたファンの生の声を抽出すると、以下のような実態が見て取れます。
- 「職場の理不尽な人間関係に疲れたとき、チェシャ猫の『ここではみんな狂っているんだから気に病むな』というスタンスに救われる」(20代・IT企業勤務女性)
- 「白うさぎの時間に追われる焦燥感は、現代人の日常そのもの。昔は変なキャラだと思っていたが、大人になって痛いほど共感できる」(30代・営業職男性)
- 「マッドハッターと三月うさぎの終わらないお茶会は、大人の欺瞞的な社交界の空疎さを極限まで皮肉っていて痛快」(40代・文芸サークル主宰)
読者は幼少期に「おかしな夢の世界の珍客たち」として彼らに出会い、大人になって社会に出た後、それらのキャラクターが「現代社会の狂気や抑圧そのもの」であったことに気付きます。この二重構造こそが、本作が単なる子ども向けの童話に終わらず、大人の鑑賞に堪えうる理由です。