木村氏のスタイルを語る上で最大の謎であり、同時に最大の魅力とされてきたのがキムタクピアス左耳の理由です。デビュー当時から現在に至るまで、右耳にはホールを開けず、一貫して左耳のみに着け続けるスタイルを崩していません。
これには装飾文化の歴史と深い関係があります。中世ヨーロッパの騎士道文化において、「左耳のピアス」は守るべき女性がいる強き男の象徴であり、戦場へ赴く際に愛する人を守護する誓い(勇気と誇り)を意味していました。対照的に、右耳のみの着用や両耳への着用には異なるセクシャリティやサブカルチャー的なメッセージが込められることが多く、当時の日本のストリートシーンにおいても「男は左耳に1つ」という暗黙のドレスコードが形成されていた背景があります。
また、当時のテレビ番組や雑誌の手記において木村氏が語っていたスタンスは、極めてシンプルかつ頑固でした。「誰かの真似をして両耳に開けるのではなく、自分にとってしっくりくるバランスがこれだった」というニュアンスの発言に象徴されるように、他人の評価や流行の浮き沈みで自身のアイデンティティを変えないという決意表明でもあったわけです。片耳だけに光るシルバーやゴールドのスタッドは、顔の輪郭を引き締め、左右非対称(アシンメトリー)な陰影を生み出すことで、唯一無二の精悍さを際立たせる効果をもたらしています。