裁縫初心者が最も陥りやすい誤解が、「ピンキング鋏(ギザギザバサミ)で切れば端処理は完了する」という思い込みです。
ピンキング鋏がほつれを抑制できる理由は、布を斜め45度(バイアス方向)に細かく裁断することで、経糸と緯糸が一本ずつ抜け落ちる連鎖を食い止めるという力学的根拠に基づいています。しかし、この効果が成立するのは「高密度に織られた平織りの綿ブロードやシーチング」などごく一部の生地に限られます。
リネン(麻)、ダブルガーゼ、ツイード、ざっくりしたウールなど、織り目が甘く隙間のある生地をピンキング鋏だけで済ませて洗濯機に投入した場合、わずか1〜2回の洗濯でギザギザの山が崩壊し、大量の糸くずの塊と化します。クチュリエブログなどの専門手芸メディアでも繰り返し指摘されている通り、ピンキング鋏は「裏地をつけて断ち端が直接擦れない構造にする場合の間接的な処理」として捉えるべきであり、露出する単衣仕立ての布端には必ず手縫いのかがりや折り伏せを組み合わせる必要があります。