育伸社学力テストの難易度や偏差値の実態を正しく理解するには、まずこのテストが「誰を対象に、何を測定するために作られているのか」という設計思想を知る必要があります。大手進学塾が主催する選抜模試(サピックスオープンや駿台模試など)が難関校・最難関校の選抜を目的として難問・奇問を散りばめているのに対し、育伸社のテストは公立小中学校の学習指導要領に忠実な基礎〜標準問題が全体の約70〜80%を占めています。
平均点の推移を見ると、各教科ともおおむね55点から60点前後に着地するよう緻密に作問されています。極端な難問で点数を削り落とすのではなく、教科書の基本事項、重要語句の理解、標準的な計算力や読解力が身についているかを正確にスクリーニングする構造です。そのため、学校の定期テストで平均点以上を維持している生徒であれば、極端に低い点数を取ることは稀といえます。
ここで多くの保護者が直面するのが「偏差値のギャップ」です。育伸社学力テストを受験する母集団は、地域の中堅進学塾や補習型個別指導塾に通う生徒が中心となります。超難関私立を目指す層がごっそり抜けているケースが多いため、難関模試と比較した場合、同じ学力であっても育伸社の偏差値は5〜10程度高めに算出される傾向があります。教育関係者の間では「育伸社で偏差値60であっても、難関オープン模試では偏差値50前後に相当することが珍しくない」と指摘されており、数字の表面だけを見て安心してしまうのは禁物です。
一方で、学校の定期テストでは高得点を取っているのに「育伸社学力テストになると成績が伸び悩む」と悩む子どもも存在します。その主な理由は、学校のテストが「直前に暗記した範囲」から出題されるのに対し、学力テストは「既習範囲全体からの実力出題」となるためです。単元の枠組みを超えた融合問題や、誘導のない記述問題に直面した際、丸暗記に頼っていた生徒は途端に失点を重ねてしまいます。育伸社学力テストは、まさにそうした「見せかけの定期テスト高得点」の裏にある理解不足を容赦なくあぶり出すリトマス試験紙といえます。