密室の中で進行していた事態の全貌は、公判を通じて少しずつ明るみに出た。当時23歳だった母親の下村早苗受刑者は、幼い長女と長男を自宅マンションに置き去りにし、風俗店の仕事や交友関係に依存しながら数週間にわたり帰宅しなかった。部屋のドアノブには粘着テープが貼られ、子供たちが外へ出られない状態に置かれていたとされる。大阪地方裁判所で開かれた公判では、水道も止められ、ゴミが散乱する室内で幼い命が削られていった残酷な光景が描かれた。
法廷で焦点となったのは、殺意の有無と責任能力の程度だった。裁判記録には、精神的に追い詰められ現実逃避を重ねていった母親の歪んだ心理状態が記録されている。極限状態における重度のネグレクト(育児放棄)は、単なる母親個人の資質の問題だけではなく、誰にも頼れない孤立状態が引き金となった側面を浮き彫りにした。求刑どおり懲役30年の判決が言い渡されたが、裁判が残した重い問いは今も消えていない。