マイクの前に立つ前のキャリア、あるいはマイク前での表現を根本から支えているのが、劇団青年座で培われた舞台俳優としての身体性と演技論だ。声優という枠組みにとどまらず、全身を使って役を生きる演劇の土台があるからこそ、その「声」には肉体的な質量が宿る。
舞台の上で培われた声量、息遣い、そして相手の演技を受けるリアクションの感度。それらがマイクを通じてキャラクターに血を通わせる。声の演技は、顔が見えないからこそ役者の「背中」が見える仕事だ。彼のセリフに滲み出る圧倒的な奥行きは、長年舞台の板の上で鍛え上げられた演技者としての誇りそのものである。