1973年の創業当時、田むら銀かつ亭は一般的なとんかつ専門店としてスタートを切った。しかし、時代の移り変わりとともに、強羅温泉を訪れる湯治客や観光客のニーズは多様化していく。「胃に優しく、それでいて満足感のある新しい料理を提供したい」という情熱から生まれたのが、隣り合う箱根銀豆腐との協力による豆腐かつ煮だった。
地域の伝統産業と手を取り合い、単なる観光地の飲食店にとどまらない独自のブランド価値を構築したこの取り組みは、外食・フードサービス産業における地域共創の成功モデルとしても高く評価されている。チェーン展開に頼ることなく、強羅という土地の空気感と水、そして職人の手仕事にこだわり続ける姿勢こそが、半世紀以上にわたって人々を魅了し続ける最大の理由なのだ。