多くの人が疑問を抱くのが「足がすくむのは単なる怖がりなのか、それとも病気なのか」という境界線です。精神医学の国際的診断基準であるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)において、高所恐怖症は「限局性恐怖症(Specific Phobia)の高所型」として明確に定義されています。
単なる怖がりと医学的な恐怖症を分ける最大の決定打は、「危険の程度と恐怖の強さの不釣り合い」および「回避行動による日常生活の破綻」です。一般的な人は、断崖絶壁に立てば恐怖を覚えますが、頑丈なガラスや手すりで守られた高層タワーの屋内展望フロアであれば、時間の経過とともに落ち着きを取り戻します。一方、限局性恐怖症の当事者は、客観的な安全が保証されている環境であっても脳の扁桃体が過剰興奮し、パニック発作と同等の身体反応を示します。
日本精神神経学会の臨床指針でも示されている通り、恐怖の対象に直面した際にほぼ必発で恐怖・不安反応が誘発され、それを避けるために著しい生活上の損失(昇進の辞退、引っ越し先の制限など)が出ている場合、単なる気質ではなく「受診すべき疾患」として扱われます。