巌勝が鬼となってから数十年後、老境に達した弟・縁壱と再会を果たします。痣の寿命を超えて85歳の天寿を全うしようとしていた縁壱は、鬼となった兄を前に涙を流し、一太刀で黒死牟の頸に刃を届かせました。しかし、最後の一撃を放つ寸前、縁壱は寿命を迎え、立ったまま息を引き取ります。
「神に見放された自分」と「最期まで自分を圧倒した弟」への怒りから、黒死牟は縁壱の亡骸を真っ二つに斬り裂きました。その時、衣服の間から転がり落ちたのが、幼少期に巌勝が縁壱へ与えた手作りの粗末な笛でした。縁壱は何十年もの間、兄からもらった宝物としてその笛を肌身離さず大切に持っていたのです。
無限城の決戦において、悲鳴嶼行冥、不死川実弥、時透無一郎、不死川玄弥の決死の猛攻を受けた黒死牟は、醜悪な異形へと再生しながらも「自分は何のために生きてきたのか」という自問自答に囚われ、崩壊を迎えます。灰となって消滅した彼の跡に残されていたのは、かつて切り捨てたはずの真っ二つに割れた弟の笛でした。どれほど憎悪し嫉妬しても、心の底では弟を愛し、人間であった頃の絆を捨てきれなかった悲哀の証明です。