大谷直子の女優人生において決定的な転機となったのが、1980年公開の映画『ツィゴイネルワイゼン』だ。鬼才・鈴木清順監督が手がけた本作は、日本アート・シアター・ギルド(ATG)の配給により、東京・タカシマヤの屋上に設置されたプレハブ小屋の特設映画館で公開されるという伝説的な興行形態でも話題を呼んだ。
本作で彼女は、破滅的な美しさをまとった中砂の妻・園と、その妹であり芸者の小ねという二役を見事に演じ分けた。共演の原田芳雄が演じる中砂との間に漂う、生と死、正気と狂気が入り交じる空間。そこで立ち上る濃密なエロティシズムは、観客を幻惑の世界へと引きずり込んだ。