工業や救助の世界から一転し、繊細な医療やサイエンスの現場でもスプレッダーは固有の活躍を見せます。
歯科治療で用いられる歯科用スプレッダーは、むし歯が進行して神経を除去した後の「根管治療」で使用される手用インスツルメントです。細く尖った円錐形の金属器具で、根管内に挿入した主根管充填材(ガッタパーチャポイント)の隙間に押し込み、側方へ圧接してスペースを作ります。そこに副ポイントを追加充填(側方加圧根管充填法)することで、根管内の無菌封鎖性を高めて再感染を防ぎます。
また、生物学や創薬の実験室で重宝されるセルスプレッダーは、ガラスやプラスチック、ステンレスで作られたL字型やT字型の棒状ツールです。微生物や細胞培養の際、寒天培地の表面に滴下した菌液を均一に塗り広げ(塗抹)、均一なコロニーを形成させるために用いられます。
なお、公衆衛生や疫学の分野で耳にするスーパースプレッダーは器具ではなく、「通常よりもはるかに多くの二次感染者を生み出す感染個体(または人)」を指す専門用語です。道具のスプレッダーと同様に「広範囲に広げる要因」という共通の概念から名付けられています。