「普通のヘアカラーで白髪も染まる」という噂が広まった背景には、カラー剤の進化と人々の見え方の変化という2つの要因が存在します。結論から言えば、白髪に色が「つく」ことと、黒髪と同じように「染まる」ことは科学的に全く別次元の現象です。
日本ヘアカラー工業会の技術資料および大手染毛剤メーカーの研究報告によると、おしゃれ染めと白髪染めの違いは、配合されている「ブリーチ力(脱色力)」と「ブラウン染料の含有量」のバランスにあります。ファッションカラーはメラニン色素を多く含む黒髪を明るく脱色しながら、アッシュやピンクなどのニュアンス染料を乗せる処方です。一方で、メラニンが完全に消失した白髪の内部を満たすための濃厚なブラウン色素は、ごく微量しか含まれていません。
それにもかかわらず「染まった」と感じる人がいる決定的な理由は、白髪染めを使わない白髪染めと呼ばれるアプローチが黒髪と白髪のコントラストを極限まで近づけているからです。黒髪を8〜9トーンまで明るく脱色し、白髪にほんのり透明感のある色調(ベージュやグレージュ)を被せることで、光の反射を統一させて境目をカモフラージュしています。つまり、「白髪そのものがしっかり着色された」のではなく、「周囲となじんで見分けがつかなくなった」状態を指しているのが真相です。