厚生労働省の各種動態調査や民間の意識調査をひもとくと、理想の子ども数を「3人」と答えながらも、実際には2人で出産を終える夫婦が全体の過半数を占めています。頭では「もう1人」を望みながら、なぜブレーキを踏まざるを得ないのか。その背景には、個人の努力だけでは突破しにくい2つの高い壁が存在します。
第1の壁は、言うまでもなく世帯年収と将来への経済的不安です。民間調査機関のアンケートでも、「3人目を諦めた理由」として約7割の保護者が「経済的理由(教育費・養育費)」を筆頭に挙げています。とりわけ都心部を中心に激化する中学受験熱や大学進学率の上昇、さらには近年の断続的なインフレが、親たちの心理的ハードルを著しく引き上げています。「現在の世帯年収で2人なら不自由なく育てられるが、3人になると全員に希望通りの進路を選ばせてやれないかもしれない」という懸念が、親の決断を躊躇させる最大の要因です。
第2の壁は、日常のオペレーション崩壊とワンオペ育児のキャパシティオーバーです。物理的な事実として、人間の大人の手は2本しかありません。子どもが2人であれば両親で1対1のマークがつきますが、3人になった瞬間、親の手の数を子どもの数が上回ります。
「公園へ行っても上の2人が別々の方向に走り出し、抱っこ紐の赤ちゃんを抱えて立ちすくむ」「発熱や感染症が家庭内で順番に発生し、1か月近く仕事にならなかった」――。SNSや当事者の取材でも、平日ワンオペを強いられている母親・父親から悲鳴のような証言が相次いでいます。仕事と家庭の両立でギリギリのバランスを保っている家庭ほど、「あと1人増えたら確実に自分が壊れる」という危機感がリアルな防衛本能として働くのです。