なぜ青学大は選手が入れ替わっても強さを維持できるのか。その真相は、青学駅伝・原晋監督の育成メソッドが持つ構造的な仕組みにあります。中国電力のトップ営業マンから転身した原監督が導入したのは、体育会特有の精神論や上意下達の軍隊的指導ではなく、ビジネス社会で用いられる「目標管理制度(MBO)」と「心理的安全性の構築」でした。
選手たちは毎月、自らの目標タイムや課題を記した管理シートを作成し、日々の練習を自己評価します。「言われた練習をこなす選手」ではなく、「自分の現在地と目標のギャップを埋めるために何が必要か」を言語化できる選手へと成長させるアプローチです。この自律性を促す環境によって、たとえレース本番で想定外のアクシデントや気象条件の悪化が起きても、選手自身がペース配分や走法を柔軟に判断できるようになります。
心理学における「自己決定理論」が示す通り、自ら選択して取り組む目標は内発的動機づけを高め、極限のプレッシャー下でも折れないメンタルを生み出します。原監督が公の場で見せる明るいキャラクターの背後には、選手一人ひとりの主体性を限界まで引き出す緻密な組織マネジメントが確立されています。