食肉流通の世界において、羊肉の種別は単なる主観的な柔らかさではなく、明確な国際基準と月齢、そして何より「永久歯の萌出(ほうしゅつ)数」によって厳格に格付けされています。主要輸出国である豪州の食肉家畜生産者事業団(MLA)やニュージーランド規格では、歯の本数が品質管理の絶対的なインジケーターとして採用されています。
一般に広く親しまれている「ラム」は、生後1年未満で永久門歯が1本も生えていない子羊を指します。骨格や筋肉がまだ未発達で筋繊維が非常に細かく、水分を多く含んでいるため、極めて柔らかくクセのない肉質に仕上がります。
対する「マトン」は、生後2年以上が経過し、永久門歯が2本以上生えそろった成羊の肉です。牧草を長期間反芻(はんすう)して育つため、筋肉組織が発達して繊維が力強く締まり、羊肉ならではのコクと芳醇なアロマが凝縮されます。
そして今、食通の間で熱い視線を集めているのが、両者の中間に位置する「ホゲット(Hogget)」です。生後1年以上2年未満、永久門歯が1本から2本生えた若羊を指し、子羊のみずみずしい柔らかさと成羊の深い旨味を奇跡的なバランスで兼ね備えています。国内流通量は全体の数パーセント程度と極めて希少ですが、羊肉愛好家からは「最もバランスに優れた究極の羊肉」と高く評されています。