じゃじゃ麺のルーツは、戦前の旧満州(現在の中国東北部)にさかのぼります。終戦後、盛岡へ引き揚げてきた高階貫勝(たかしな かんしょう)氏が、満州で口にした家庭料理「炸醤麺」の味が忘れられず、昭和28年(1953年)頃に屋台を開いたことがすべての始まりです。
当時の盛岡では中華麺の原料となるかんすいや中国特有の調味料が入手困難でした。そこで高階氏は、地元の小麦粉を用いて試行錯誤を重ね、日本のうどん製法をベースにした平打ち麺を開発。味噌も日本の八丁味噌や仙台味噌をブレンドし、十数種類の素材とスパイスを練り込んで、盛岡の風土に合う独自の味噌を作り上げました。これが名店「白龍(パイロン)」の創業史です。
常連客の手記や創業時の証言によると、当初は屋台の寒さをしのぐため、麺の茹で汁を丼に注いで温まる客がいたといいます。そこへ高階氏が「卵を溶いて味噌を足してみなさい」と勧めたことが、名物「ちーたんたん」の誕生につながりました。貧しい時代における知恵と温もりから生まれた一杯は、いまや市内に数十の専門店がひしめく盛岡市民のソウルフードへと昇華しています。