2023年10月期に日本テレビ系列で放送された連続ドラマ『セクシー田中さん』を巡っては、原作の尊重方針に関する深刻な認識の齟齬が存在していました。2024年5月から6月にかけて公表された小学館の特別調査委員会報告書、ならびに日本テレビの社内特別調査チーム報告書によって、その具体的な経緯と構造的要因が明らかになっています。
芦原妃奈子はドラマ化を承諾するにあたり、「連載中の未完作品であるため、結末を含め原作を忠実に再現すること」「改変が必要な場合は原作者がプロットや脚本を用意すること」を明確な条件として提示していました。しかし、制作現場においては以下の構造的問題が発生していました。
- 条件伝達の曖昧さ:出版社側の担当者とテレビ局プロデューサーの間で、原作者の強い意向が脚本執筆陣に対して十全に、かつ正確に共有されていなかった点。
- 契約書締結の遅延:映像化に伴う詳細な条件を明文化した契約書の締結が制作開始前に完了しておらず、口頭ベースの認識差が埋まらないまま撮影が進行した点。
- コミュニケーションの断絶:脚本の修正要請が繰り返される中で、原作者と脚本家の間に直接的な意思疎通の場がなく、中間関係者を経由したことで意図の歪みやフラストレーションが蓄積した点。
結果として第9話・第10話の脚本を芦原妃奈子自らが執筆せざるを得ない事態に追い込まれ、放送終了後のSNS投稿をきっかけに大きな議論へと発展しました。一連の経緯は、個人の資質の問題ではなく、旧態依然としたメディアミックス体制が引き起こした組織的・構造的破綻であったことが検証されています。