夜空に浮かぶ不気味な赤い月に不安を感じる声が急増する背景には、「大災害の前に自然界が何らかの前触れを放つはずだ」という人間の根源的な心理が働いています。しかし、結論から率直に述べれば、赤い月 地震の科学的根拠とされる言説は、現代の地球物理学および地震学において完全に否定されています。
地震の発生プロセスは、地下深部のプレート運動によって岩盤に歪みが蓄積し、限界に達した断層が急激に破壊・ズレ動く現象です。これに対し、月の見え方は地球の大気状態や天体間の位置関係によってのみ決定づけられます。地殻深部で生じる力学的破壊が、何十万キロメートルも彼方にある月の光学像をピンポイントで赤く変色させる物理的経路は存在しません。
いわゆる宏観異常現象と地震の前兆(井戸水の濁り、動物の特異な行動、発光現象など)については、過去に国内外の大学や研究機関で長期にわたる統計調査が実施されてきました。しかし、いかなる観測データを用いても「赤い月が出現した後に有意な確率で地震が発生する」という再現性は一度も証明されていません。
気象庁の見解と地震予測においても、現在の科学技術水準では突発的な地震の「日時・場所・規模」を事前察知することは原理的に不可能と明言されています。大気中の光の見え方に過ぎない赤い月を大地震の予知指標として扱うことは、防災実務の現場においても一切考慮されていません。