アブの咬傷は、ブユや蚊の虫刺されとは根本的にメカニズムが異なる。一般にアブ(虻)は、鋭利な口器で皮膚を噛み切り、溢れ出た血液を摂取する。そのため傷口が大きく開き、外部の細菌が侵入しやすい無防備な状態に晒される。
医療・皮膚科学の観点からも、かき壊した傷口から黄色ブドウ球菌などが侵入する「とびひ(伝染性膿痂疹)」や、皮膚の深い層まで感染が広がるセルライト(蜂巣炎)への移行は警戒すべき事態とされる。患部が熱を持ち、赤い線が神経に沿って広がるような症状が出た場合、それは単なる虫刺されの域を超えた細菌感染症のサインだ。
強い痒みに耐えかねて爪を立ててかきむしる行為は、症状を壊滅的に悪化させる。皮膚組織が破壊され、治癒後に黒ずんだ色素沈着や痕(しこり)が数ヶ月から数年にわたって残る原因にもなる。