「空と君のあいだに」がこれほどまでに聴く者の胸を打つ最大の理由は、その歌詞に込められた視点の特異性にあります。一見すると、傷ついた恋人や大切な友人に寄り添う切ないラブソングのようにも受け取れますが、中島みゆき本人がラジオ番組やインタビュー等で明かした制作意図によると、この歌詞は主人公すずをそばで見守り続ける「愛犬リュウ(ピレニアン・マスティフ系の雑種犬)の目線」で書かれています。
あらためて歌詞を読み解くと、その構造の必然性に驚かされます。
「空と君とのあいだには 今日も冷たい雨が降る / 君が笑ってくれるなら 僕は悪にでもなる」
大人の欺瞞や社会規範に縛られた人間には決して言えない、「たとえ世界を敵に回し、悪に手を染めてでも君の笑顔を守る」という究極の献身。これは、道徳や損得勘定を超越し、ただ一人の主人のためだけに命を捧げる犬という存在だからこそ成立する純粋な誓いです。
「君が涙のときには 僕はポプラの枝になる / 孤独に凍える冬には 嵐をよける枯葉になる」という比喩表現も、無力でありながら全身を使って少女を暖めようとする動物のぬくもりそのものを表しています。中島みゆきは、救いのない過酷なシナリオを読み込み、「この孤独な少女を誰が無条件で肯定しているのか」を突き詰めた結果、人間ではなく寄り添う犬の魂に降り立って言葉を紡いだのです。