打者が「ストレートだ」と判断してスイングを始動した瞬間、ボールがわずかに内角へ食い込みながら手元で沈む――これが打者を打ち取るプロ野球のツーシームの軌道です。なぜ、これほどまでに打者の手元で急激な変化が起きるのでしょうか。
秘密は、近年のトラッキングシステム(Statcastやラプソードなど)の進化によって解明された「シーム・シフト・ウェイク(SSW:縫い目によって生じる空気の乱流効果)」にあります。従来のピッチング理論では、ボールの変化はマグヌス効果(回転による揚力や横曲がり)だけで説明されていました。しかしツーシームは、ボールが1回転する間に縫い目が2回しか現れないため、ボールの左右で空気抵抗の剥離ポイントが非対称になります。この空気の剥離差がボール後方に斜めの乱気流(ウェイク)を作り出し、ボールを進行方向とは逆方向、すなわち打者の手元で急激に沈み込ませる力を生み出しているのです。
この変化を最大限に引き出すためのツーシームの曲げ方のコツは、リリースの瞬間にあります。多くの投手が「変化させたい」と焦るあまり、手首を内側にひねったりボールをチョップするように切ったりしてしまいます。しかし、それではボールのスピン効率が破綻し、ただの力のないボールになってしまいます。重要なのは、フォーシームと全く同じ強い腕の振りで腕を振り抜き、リリースの最後の瞬間に人差し指の先端で縫い目を前方に押し込む感覚を持つことです。フォーシームとの違いを意識しすぎず、リリースの直前まで「ストレート」を投げる軌道を描くことこそが、急激な落差を生む決定打となります。