「サイダーとラムネは味が違う」と思い込んでいる消費者は非常に多い。しかし、一般社団法人全国清涼飲料連合会などの業界資料や製造メーカーの配合表を確認すると、現代において両者の基本原料は「水」「果糖ぶどう糖液糖などの糖類」「酸味料」「香料(フレーバー)」で構成されており、液体そのものの法的な区別は存在しない。
では、何が両者を決定づけているのか。その答えは「容器(パッケージ)」にある。清涼飲料水業界において、長年にわたり以下の基準が暗黙の、かつ確固たる定義として共有されてきた。
- ラムネ:瓶の口がビー玉(ガラス玉)で密栓されている「玉詰びん(コッドネック・ボトル)」に充填された炭酸飲料。
- サイダー:王冠(クラウン)やスクリューキャップ、アルミ缶、一般的なペットボトルに充填された透明炭酸飲料。
日本農林規格(JAS規格)の「炭酸飲料のJAS規格定義」においても、サイダーやラムネは独立した個別規格ではなく、いずれも「ガス圧を有する透明炭酸飲料」の範疇に包括されている。つまり、中身が全く同一の液体であっても、ビー玉入りのガラス瓶に詰めれば「ラムネ」と呼ばれ、缶やペットボトルに詰めれば「サイダー」と呼ばれる構造になっている。
この明確な棲み分けが維持されてきた背景には、昭和中期に制定された「中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業等の事業活動の調整に関する法律(分野調整法)」が関係している。大東亜戦争後の高度経済成長期、大手飲料メーカーが自動化ラインでサイダーを大量生産する中、手作業の工程が多く残る中小のラムネ製造業者を保護するため、行政指導によって大手の玉詰びん市場への参入が制限された歴史的経緯がある。