「なぜ犬や猫とも異なる、パンダ特有のイラストにこれほど強く惹きつけられるのか」――この素朴な疑問に対し、視覚認知心理学や動物行動学の知見は極めて明快な答えを提示している。最大の鍵を握るのは、動物行動学者コンラート・ローレンツが提唱した「ベビーシェマ(Kindchenschema)」の視覚的合致だ。
人間は種族の生存本能として、「丸みのある大きな頭部」「顔の中央よりやや下に位置するパーツ」「ふっくらとした頬や体型」「ぎこちない動き」に対して、無条件に庇護欲や安心感を抱くようプログラムされている。実物のパンダもこの特徴を色濃く備えているが、イラストとしてデフォルメされる過程でそれらの要素が極限まで純化される。これにより、脳内の報酬系がダイレクトに刺激され、強烈なリラックス効果がもたらされる仕組みだ。
さらに見逃せないのが、パンダが可愛い理由と特徴を語る上で欠かせない「アイパッチ(目の周りの黒い毛)」が生み出す錯覚である。実際のパンダの眼球自体は極めて小さく、時に鋭い光を宿している。ところが、周囲を囲む大きな黒い楕円斑が人間の目には「無垢で巨大な瞳」として補正認識される。また、黒と白という究極のハイコントラストは、OLED(有機EL)ディスプレイが標準化した現代のスマートフォン画面上でも視認性が際立ち、情報過多で疲弊した現代人の網膜にストレスフリーな情報として飛び込んでくるのだ。
加えて、特定の表情(怒り・悲しみなど)を強く主張しないニュートラルな顔つきは、見る側の感情を投影しやすい「エモーショナルな余白」を残す。嬉しいときには微笑んで見え、落ち込んでいるときにはそっと寄り添ってくれているように感じられる――この包容力こそが、数多の動物キャラクターの中でパンダイラストが一線を画す本質的な理由と結論づけられる。