『夏の扉』の根底に流れるエネルギッシュな推進力を生み出したのが、フォーク・ロックバンド「チューリップ」のリーダーである財津和夫の作曲です。財津和夫は前作『チェリーブラッサム』に引き続いてメロディを担当し、従来のアイドルソングの枠組みを超えたニューミュージック直系の洗練されたポップセンスを注入しました。
当時の特番インタビューや回顧録において、財津和夫は「彼女の持つ突き抜けた声のパワーを受け止めるため、テンポ感とスケール感を意識してペンを走らせた」と述懐しています。サビに向かって一気に視界が開けるメロディラインは、聴き手の感情を無条件に高揚させる力を持っています。
そして、その旋律に鮮やかな色彩を与えたのが作詞家・三浦徳子による歌詞です。『夏の扉』の歌詞の意味を探ると、単なる男女の恋愛描写にとどまらず、少女から大人の女性へと移行する季節のきらめきと、ためらいながらも未知の世界へ一歩踏み出す内面の躍動が描かれていることが分かります。「髪を切った」「素足」「微熱」といったワードを散りばめながら、夏の扉を開けて飛び出していく主人公の心情を、極めて視覚的かつリズミカルに具現化しています。
さらに、名匠・大村雅朗によるブラスアレンジとギターの疾走感が加わることで、40年以上経過した現在でもまったく古びない、立体的でグルーヴィーなポップスへと昇華されました。