NHK名作『京都人の密かな愉しみ』がなぜここまで人々を魅了するのか。その最大の理由は、京都という街が持つ「美しさ」と「排他性」、そしてそこに生きる人々の「諦念と誇り」を妥協なく映像化した構成力にあります。
物語の軸となるドラマパートで圧倒的な存在感を放ったのが、老舗和菓子屋「久楽屋春信」の若女将・沢藤三八子を演じた常盤貴子です。京都の旧家に生まれ、伝統の重圧を背負いながら生きる三八子の佇まいは、凛とした京言葉の響きとともに艶やかな緊張感を漂わせました。外国人類学者のヒースロー教授(団時朗)という「部外者の視点」を配置することで、京都人が無意識に張り巡らせている結界や暗黙のルールが鮮やかに浮き彫りになります。
本シリーズの画期的な点は、ドラマの合間に料理研究家・大原千鶴による京都の旬の家庭料理コーナーや、バーや居酒屋の探訪ドキュメンタリー、さらには街角に潜む奇譚を紹介するショートフィルムが重層的に挟み込まれる構成にありました。単なる観光案内でも純粋な劇映画でもない、いわば「映像の懐石料理」とも呼ぶべき重厚な構成が、知的好奇心の強い大人たちの心を鷲づかみにしたのです。