本作の精神的支柱であり、アメリカ映画史における「最高のヒーロー」と称されるのが、弁護士アティカス・フィンチだ。暴力ではなく言葉と誇りをもって偏見に立ち向かう彼の姿勢は、理想的な父親像であり、揺るぎない正義の象徴として刻まれている。
このアティカス役に魂を吹き込んだのが、名優グレゴリー・ペックである。静かな佇まいの中にみなぎる揺るぎない意志、子供たちに注ぐ温かい眼差し、そして法廷で見せた圧巻のスピーチ。ペックの演技は観客と批評家の双方から絶賛を浴び、第35回アカデミー賞主演男優賞をもたらした。彼自身、生涯のハマリ役としてアティカスを愛し続け、撮影で着用した眼鏡を大切に保管していたというエピソードは有名だ。