渡瀬恒彦さんを語る上で欠かせないのが、実兄であり石原プロモーションの顔でもあった渡哲也さんの存在だ。同じ役者の道を歩みながらも、お互いを深くリスペクトし合う兄弟の絆は、昭和・平成の芸能界において異彩を放っていた。東映の看板役者として身体を張ったアクションや凄みのある役柄に挑み続けた弟と、日活から石原プロへと進み大スターの道を歩んだ兄。
二人の関係は、切磋琢磨するライバルであり、同時に固い信頼で結ばれた家族でもあった。妻はそんな兄弟の深い繋がりを尊重し、静かに見守り続けたという。家庭における渡瀬さんは、画面で見せる強面な印象とは異なり、家族を何よりも大切にする温かな父親であり夫であった。兄弟愛と家族の強い絆が、彼の役者としての太い芯を形作っていたことは疑いようがない。