羽生結弦のキャリアを語る上で欠かせないバイオリンの金字塔プログラムが、フリースケーティングで滑られた『Origin』だ。この楽曲は、ハンガリー出身の世界的バイオリニストであるエドヴィン・マートン(Edvin Marton)が手がけた『Art on Ice』や『Magic Stradivarius』をベースに構築された。伝説のスケーターであるエフゲニー・プルシェンコへのリスペクトを込めつつ、羽生自身の生き様を投影させたこの作品は、世界中のフィギュアスケートファンを熱狂させた。
制作の裏側において、エドヴィン・マートンの刻む激しいストロークと羽生の過酷なジャンプエレメンツの融合は、まさに命がけの対話であったという。ストラディバリウスの名器が奏でる重厚なバイオリン演奏と、鋭いエッジが氷を切り裂く音。日本スケート連盟の競技会時代、圧巻の構成で世界記録を更新し続けたあの演技の裏には、バイオリニストとの互いの魂をぶつけ合うような緻密な音響調整と深い相互理解が存在していた。