『猫の恩返し』は、宮崎駿監督の企画・監修のもと、森田宏幸監督がメガホンをとったスタジオジブリの佳作です。スタジオジブリの名曲・挿入歌といえば、重厚なオーケストレーションや情緒的なバラードが想起されがちですが、本作の主題歌選定においてスタジオ側が求めたのは、極めて日常的で軽やかな手触りでした。
当時の制作資料やインタビュー記録によると、プロデューサーの鈴木敏夫氏が着目したのが、当時京都を拠点に活動していたシンガーソングライター・つじあやのでした。発注時のテーマは「自転車に乗って坂道を駆け下りるときのような爽快感」。これを受けた彼女は、自身が学生時代に鴨川沿いを自転車で走り抜けた実体験や、何気ない日常の情景を重ね合わせながらメロディを紡ぎ出しました。
単なるアニメーションの添え物ではなく、映画のエンディングで観客が日常の現実世界へと軽やかに帰還するための「心の架け橋」として設計された点に、本作が20年以上色褪せない最大の理由が存在します。