ネット上の情報や日常の会話には、蕎麦に関するいくつかの誤解が存在します。代表的な盲点を整理しておきましょう。
1. 「せいろそば」は蒸した温かい蕎麦ではない
「せいろ(蒸籠)」という名前から、温かく蒸した蕎麦と勘違いされることがありますが、基本的には冷たい蕎麦です。江戸時代、幕府の価格統制令によって蕎麦の定価が制限された際、蕎麦屋が量を減らしても見劣りしないよう、底上げできる蒸籠に盛って提供したのが始まりです。現代では、手打ち蕎麦店が水切れを良くし、麺の美しさを引き立てる器として広く採用しています。
2. もりそばに「わさび」が付かないのは手抜きではない
伝統的な江戸前蕎麦の老舗では、もりそばを注文すると薬味皿にネギしか乗っておらず、わさびが付かない店が存在します。これはコスト削減や手抜きではなく、「出汁と醤油が研ぎ澄まされたもりつゆの香りを損なわないため」「蕎麦本来の香りをストレートに楽しんでもらうため」という職人の美学に基づいた歴史的様式です。ざるそばを注文すると、つゆの甘みに合わせるアクセントとして本わさびが添えられます。
3. 十割蕎麦と二八蕎麦による相性の違い
蕎麦粉100%の「十割そば」は、野趣あふれる力強い風味とザラッとした舌触ばりが魅力です。この豊かな香りを堪能するには、海苔のない「もりそば(またはせいろ)」が適しています。一方、小麦粉を2割つなぎに使った「二八そば」は、滑らかな喉越しとつるみ、適度なコシが特徴であり、海苔の香ばしさやコクのあるざるつゆとも抜群の相性を発揮します。