『千と千尋の神隠し』のモデル地として、国内外の観光ガイドブックや旅行系SNSで長年まことしやかに語られてきたのが、台湾北部の山あいに位置するレトロな街「九份(ジョウフン)」です。石段沿いに連なる赤い提灯、茶藝館「阿妹茶樓」の妖艶な佇まいは、確かに劇中の歓楽街を彷彿とさせます。
しかし、台湾 九份 公式否定の真相はすでに決着がついています。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは台湾メディアの単独取材に対し、「宮崎監督と九份に行ったことはなく、映画のモデルではない」と明言。宮崎駿監督本人も台湾のテレビ局の直撃取材に対して「九份を訪れたことは一度もない」と明確に否定しています。
なぜここまで噂が定着したのでしょうか。認知心理学における「確証バイアス」に加え、東アジア特有の近代化以前の歓楽街の意匠(赤提灯、木造多層建築、立ち上る湯気)が、宮崎監督が描いた「猥雑でどこか懐かしい神々の街」の視覚的イメージと奇跡的に合致したことが最大の要因です。公式モデルではないものの、九份の景観が作品の持つアジアン・ゴシックな美学を体現している点においては、今なお訪れる価値のある名所といえます。