「渡辺さんは節分に豆まきをしなくてよい」と言われる最大の理由は、鬼の側が渡辺姓の人間を極度に恐れ、自ら避けて逃げ出すからに他なりません。わざわざ大豆を撒いて追い払うまでもなく、表札に「渡辺」と掲げられているだけで鬼が退散するため、豆を撒く必要がないと伝えられています。
この説話の中心にいるのが、平安時代中期の武将・渡辺綱(わたなべのつな)です。綱が繰り広げた凄絶な鬼退治の数々は、後世の鬼たちにとって恐怖の記憶として深く刻み込まれました。「渡辺の血筋に逆らうと命がない」と悟った鬼たちが、渡辺家を避けるようになったというわけです。
そのため、全国の渡辺家では節分の夜に豆まきを一切行わなかったり、行う場合でも「鬼は外」は口にせず「福は内」だけを唱える伝統が、親から子へと受け継がれています。