大量生産が主流となった現代の外食産業において、株式会社千寿が頑なに守り続けているのは、驚くほど手作業にこだわった工程だ。
主役となる海老は、強い甘みとしっかりとした保水性を持つ天然のアカシャエビなどを厳選。これを最高級の胡麻油をブレンドした揚げ油で、衣が米の水分を吸ってもべたつかないよう、高温かつ短時間でカラリと揚げる。天ぷら自体にしっかりと秘伝のだし塩で下味がつけられているため、天つゆなどの余分な水分を米に移す心配がない。
そして何より驚かされるのが、米の握り加減だ。機械で押し固めたような均一感は微塵もない。職人が手のひらの中で米粒の間に空気を含ませるようにして、ふわりと海老を包み込む。海苔は敢えて全体を覆わず、中央に帯のように巻くだけ。この隙間が蒸気を逃がし、時間が経っても米の輪郭を損なわない秘訣となっている。
箸休めに添えられる「きゃらぶき(フキの佃煮)」も欠かせない。創業者が「沢庵では黄色い着色料が米に移ってしまう」と憂慮し、試行錯誤の末に行き着いた名脇役だ。甘辛く炊き上げられた素朴な苦味が、海老天の油分を心地よくリセットしてくれる。