本作のヒットは、一作だけの奇跡ではない。後に発表された姉妹作『黒猫の小夜曲』など、死神シリーズとしての広がりを見せることで、ファンを魅了し続けている。犬のレオに対し、黒猫の姿で人間界に現れる別の死神・クロの登場は、この世界観の奥行きをさらに深めた。
出版業界の中でも、医療と幻想文学をこれほど絶妙な塩梅で交錯させられる書き手は稀有だ。知念実希人が創り出した構造は、各作品が独立したミステリーでありながら、作品間をまたぐ共通の倫理観や死生観によって強固に結びついている。登場人物たちが抱える過去のトラウマや交錯する人間関係の糸が、緻密に織り上げられている点こそ、長年読者を離さない最大の理由だろう。