祖父・翫右衛門の演技は、当時の歌舞伎界においても群を抜いて人間味にあふれていた。大正から昭和の激動期、社会の底辺に生きる庶民の哀歓を泥臭く、しかし繊細に演じ切った彼のスタイルは、日本の演劇史に金字塔を打ち立てた。
梅雀自身、幼少期から祖父の背中を見て育ち、その妥協を許さない役作りを身体感覚として吸収していった。単にセリフを覚えるのではなく、役柄の生い立ちや背景、心の揺れ動きまでを掘り下げる深い洞察力。現在、梅雀が見せる人間味あふれる味わい深い芝居は、まさに祖父が遺した「人間演劇」の真髄と言える。