昭和から平成にかけてのスポーツジャーナリズムは、スター選手の家族をコンテンツとして消費し尽くしてきた。『バース・デイ』のような本格的な人物ドキュメンタリー番組や、TVerで再配信される往年の名勝負特番を見返しても、長嶋家の核心部分に有希氏の姿が映り込むことはない。
テレビ局が競い合って「ミスター一家」のプライベートを暴こうとした時代、彼女の徹底した沈黙は、ある種のメディアに対する強烈なレジスタンスであった。語らないことによって、彼女は自分自身の人生の主導権を守り、同時に家族のプライベートな聖域を死守したのだ。