1970年の放送開始(前身の『なにしてあそぼう』を含めると1967年)から約24年間にわたり、ノッポさんは番組内で一度も言葉を発しませんでした。チューリップハットにサスペンダー姿で、軽やかなパントマイムと鮮やかな手先の手さばきだけで子どもたちを魅了し続けたのです。
その沈黙が破られたのが、1990年3月6日放送の『できるかな』最終回でした。工作を終えたラストシーン、ノッポさんは不意にカメラを見つめ、「あーあ、しゃべっちゃった。今日は特別でね、終りだから話をしちゃった」と優しく語りかけました。当時の視聴率データや反響を見ても、日本中の子どもと保護者に凄まじい衝撃を与えた瞬間です。
なぜノッポさんは長年の沈黙を破ったのか。後年の回想録やNHKのインタビュー取材によると、最大の理由は「長年応援してくれた全国の子どもたちへ、作り手としての生身の感謝を直接伝えたかったから」でした。番組ディレクターと綿密に打ち合わせを重ねた末、「お別れの時だけは、ノッポさんというキャラクターの奥にいる高見のっぽとして、本当の言葉を届けよう」と決断されたのです。さらに、後番組『つくってあそぼ』のワクワクさんとゴロリへ番組の魂を継承するという、テレビ史に残る美しい引継ぎの意味も込められていました。