都内の老舗フィルム現像所を訪ねると、カウンターには長蛇の列ができていた。並んでいるのは、かつてのカメラマニアではなく、圧倒的にZ世代の若者たちだ。フィルム代と現像代を合わせれば、決して安い趣味ではない。それでも彼らは現像所に足を運ぶ。
「現像を待つ数日間。その時間が愛おしい」
ある高校生はそう微笑む。ボタンを押せば結果が即座に出る世界で、「待つ」という行為そのものがエンターテインメントに昇華している。データを受け取り、スマホの画面にファーストショットが表示された瞬間の歓喜。効率化を突き詰めた社会が落とし込んできた「感情のタメ」を、彼らはフィルムを通して買い戻しているのだ。