後継者を産むという規範から解き放たれた昭恵氏は、自らのアイデンティティを確立すべく動き出した。東京・神田に無農薬米や国産食材にこだわった居酒屋「UZU」をオープンさせ、山口県で自ら酒米を育てるプロジェクトをスタートさせた行動力は、保守派の議員たちを大いに驚かせた。
自由民主党の最大派閥であった清和政策研究会(安倍派)の重鎮たちが眉をひそめる中、彼女は「家庭内野党」として脱原発やLGBTQ+の権利擁護など、夫の政策とは一線を画すリベラルな発信を続けた。それは、名門の「妻」という役割に閉じ込められることを拒否し、自立した個として社会とつながろうとする切実な自己表現でもあった。