『不協和音』を語る上で欠かせないもう一つの論点が、「2番のサビ前に登場する、もうひとつの『僕は嫌だ』」の存在です。1番が主人公の内なる爆発であるのに対し、2番のセリフは物語の力学を大きく前進させる重要な転換点となっています。
オリジナル音源において、この2番のセリフを担当したのは長濱ねるでした。平手友梨奈の鋭利な叫びとは対照的に、長濱の「僕は嫌だ」は、声の震えや戸惑いを残しながらも、勇気を振り絞って絞り出すような哀切に満ちたトーンが特徴でした。当時、けやき坂46(ひらがなけやき/現・日向坂46)との兼任や自身の進路に揺れ動いていた長濱の境遇と重なり、ファンの胸を強く打ちました。
その後、2019年に長濱ねるがグループを卒業すると、2番のセリフはキャプテンの菅井友香へと引き継がれました。名門出身でお嬢様キャラとして愛されていた菅井が、2019年9月の東京ドーム公演で放った「僕は嫌だ」は、グループの崩壊の危機や批判から仲間を守り抜くという、凛とした怒りと気迫に満ちた叫びでした。この瞬間は、菅井友香のパブリックイメージを覆し、グループの精神的支柱としての覚悟を知らしめる名場面となりました。
歴代のステージにおいて、誰がどのパートでこの重厚なセリフを背負ったのか、その変遷を以下の比較データ表にまとめました。