計算に入る前に、2種類の器具の役割を完全に整理しておかなければなりません。ここを曖昧にしたまま計算問題を解くことは、単位のわからない計算尺を振り回すようなものです。
最大の違いは「設置場所」と「1目盛りの長さが倍率によって変わるかどうか」という点にあります。対物ミクロメーターは、プレパラートと同じようにステージの上に載せるガラス板です。そこには精密な目盛りが1mmを100等分(つまり1目盛り=10μm)して刻まれています。対物ミクロメーター10μmの理由とは、精密加工技術上の基準であり、顕微鏡の世界における絶対的な「標準原器」として機能させるためです。
一方、接眼ミクロメーターは接眼レンズの内部に挿入する円形のガラス板です。観察者の眼の直前に位置するため、対物レンズの倍率をいくら変えても、視野に見える接眼ミクロメーターの目盛り自体の「見た目の幅」は一切変わりません。しかし、対物レンズによって拡大された試料の像がその上に投影されるため、「接眼ミクロメーター1目盛りがカバーする実際の観察対象の長さ」は倍率によって変化します。この性質の違いを正確に把握することが、解法の絶対的な前提条件となります。
実験手順において、接眼ミクロメーターを先に入れる理由もここに直結しています。接眼レンズにミクロメーターを装着する作業は、鏡筒内部にホコリや異物が落ちるリスクを伴います。そのため、ステージ上に貴重な生体試料や対物ミクロメーターをセットする前の段階で、迅速にセットを完了させておくのが実験操作の鉄則だからです。
そしてもう一つ、記述試験で頻出なのが「対物ミクロメーターを外す理由」です。対物ミクロメーターはあくまで「接眼ミクロメーターの目盛り間隔を校正するための定規」にすぎません。ステージ上に対物ミクロメーターを置いたままでは、同じ位置に観察したい細胞プレパラートを置くことができず、像が重なってピントも合わなくなるため、校正が終わったら速やかに取り外す必要があります。