では、なぜ「親日だから日の丸を真似た」という根拠のない俗説が、日本国内のWeb空間でこれほど強固に信じられてきたのでしょうか。大手掲示板、Q&Aサイト、動画共有プラットフォームに投稿された数千件の言説を分析すると、一定の拡散パターンが浮き彫りになります。
2000年代初頭のテキストサイト時代から2010年代のまとめサイト全盛期にかけて、「親日国パラオの感動秘話」といったタイトルのコンテンツが大量に消費されました。その多くは以下のような定型文で構成されていました。
- 「パラオは日本に感謝しており、日の丸に似た国旗を作った」
- 「しかし日本に失礼があってはならないと、太陽ではなく月にして、中心も少しずらした」
この言説は、一見すると謙譲の美徳や他国からの崇敬を描いた心温まるエピソードに見えます。しかし、現地の歴史家や教育関係者の間では、こうした一方的な言説に対して複雑な声が上がっています。現地で長年日本語教育や文化交流に携わる関係者は次のように指摘します。
「パラオの人々は日本に対して親愛の情を抱いていますが、国旗は自分たちの主権と自然への信仰を込めて独立時に勝ち取った誇りそのものです。『日本の遠慮から月にして位置をずらした』という解釈は、彼らの主体的な独立の歴史を無視し、無意識に見下してしまう失礼な見解になりかねません」
バングラデシュについても、独立直後に日本が西側諸国の中でいち早く国家承認を行った歴史や、JICAを通じた長年の経済支援に対する国民的な感謝の念は現実に存在します。しかし、それと「国旗の意匠の決定」を直結させて語ることは、自国の独立闘争で犠牲になった同胞への冒涜と受け取られかねない危うさを孕んでいます。