下処理と調合を終えたら、いよいよ火入れに入ります。ここでの成否を決めるのが「落とし蓋の扱い」と「加熱時間の厳守」です。
まず鍋の選定ですが、切り身同士が重ならず、かつ広すぎない底平のフライパンや浅型鍋が理想的です。鍋が大きすぎると煮汁が蒸発しすぎて焦げ付き、小さすぎると魚が重なって火通りにムラが生じます。
鍋に酒、みりん、砂糖、水、生姜を入れて強火にかけ、完全にグラグラと沸騰した状態になってから、金目鯛の皮目を上にして投入します。ここで醤油を加えるタイミングを「最初から全量」にするか、「沸騰直後に半分、仕上げに半分」にするかで仕上がりの香りが変わります。香りを最大限に活かしたい場合は、醤油の半量を後入れするのがプロの手法です。
魚を入れたら即座に落とし蓋をします。ここで金目鯛の煮付け落とし蓋のコツとして重要なのは、木の落とし蓋よりも「クッキングシート(オーブンペーパー)」または「アルミホイル」を使用することです。中央に直径2cmほどの穴を開け、切り身の表面にぴったりと密着させます。
煮汁が激しく沸き立つことで生じる大きな泡が、落とし蓋と魚の隙間に充満します。この「泡のブランケット」が魚全体を包み込み、少量の煮汁であっても上面まで均一に火を通し、煮汁を循環させます。蓋の重みで繊細な身を潰す心配もありません。
気になる金目鯛切り身の煮付け時間は、一般的な厚みの切り身であれば強火〜中強火で7〜10分。これ以上煮てはいけません。タイマーをセットし、時計を見ながら加熱を管理してください。
また、味の相乗効果を高める名脇役が金目鯛の煮付け付け合わせごぼうです。金目鯛から溶け出した極上の脂と魚油を吸ったごぼうは、それ単体で主役級の美味へと昇華します。ごぼうはあらかじめ麺棒で叩いて割り、下茹でしてアクを抜いておいたものを、魚を入れるタイミングで鍋の隙間に投入します。ごぼうの持つ土の香りと食物繊維が、金目鯛の甘辛い脂と見事に調和します。