日本における食文化の観点でも、すっぽんと一般的なカメは完全に別物として扱われてきました。クサガメやイシガメは特有の泥臭さや筋繊維の硬さがあり、日常的な食用食材として定着することはありませんでした(中国医学における亀板膠など薬用利用を除く)。
一方、すっぽんは古代から「極上の出汁が出る滋養強壮食材」として珍重されてきました。その骨頂が京都発祥の「〇鍋(まるなべ)」に代表されるすっぽん鍋です。日本酒と生姜、醤油、昆布のみでシンプルに炊き上げるスープは、淡白でありながら芳醇な旨味に満ちています。
栄養学的に見ても、すっぽんの甲羅の縁(エンペラ)や皮下組織には良質な海洋性コラーゲンタンパク質が密集しています。さらに、必須アミノ酸全9種をバランスよく網羅し、血液サラサラ効果を持つEPA・DHAなどの多価不飽和脂肪酸、疲労回復を促すビタミンB群や亜鉛・鉄分を豊富に含有します。単なるプラセボではなく、生化学的に極めて優れた栄養密度を誇る点が一級の食材として君臨し続ける所以です。